犬のアトピー性皮膚炎【獣医師解説】アレルギーとの違い・診断基準・原因を詳しく

犬のアトピー性皮膚炎、発疹のない掻き壊し

「うちの子アトピーって言われたけど、食物アレルギーとどう違うの?」「どうやって診断するの?」そんな疑問をお持ちの飼い主さんへ。犬のアトピー性皮膚炎の特徴・診断基準・最新の原因論を獣医皮膚科認定医がわかりやすく解説します。

アトピー性皮膚炎って?

アトピー性皮膚炎!一度は聞いたことがあるでしょう。

お家のワンコが痒がったらアトピーなのかな?🥲 なんて思ったりしますよね。

でも一体アトピーって何?アレルギーとどう違うの?食事とは関係するの?というところを解説します。

そもそもアトピーという言葉は「奇妙な」「とらえどころのない」という意味のギリシャ語に由来し、家族あるいは家系内に出現する異常な過敏反応として1923年に名付けられました。

「アトピーってよく分からない病気でしょ?」と思っていますか?

それは100年前の話です😮 この100年の間にアトピー性皮膚炎の研究はかなり進んで、随分解明されてきています。

アトピー性皮膚炎とアレルギーの違い

 アレルギー?アトピー?どう違うの?

アトピー性皮膚炎とアレルギー、食事アレルギーの関係
アトピー性皮膚炎とアレルギー、食事アレルギーの関係

異物が体内へ侵入した時にこれを撃退する仕組みを免疫反応といいます。生体に有害な免疫反応をアレルギーといい、原因物質をアレルゲンと呼びます。

アトピー性皮膚炎はアレルギーの症状の現れ方の一つです。

食物アレルギーはアレルギーのうち食物が関係しているものです。アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを同時に持っている子もいれば、どちらかだけの子もいます。

犬のアトピー性皮膚炎の特徴

犬にもアトピー性皮膚炎があると分かったのは1941年が最初の報告です。

定義としては「特徴的な臨床像がみられる遺伝性素因を背景とした炎症性・掻痒性のアレルギー疾患で、多くの場合環境アレルゲンに対するIgE抗体の増加を伴う」とされています。

診断基準で有名なのはFavrot基準です:

  1. 初発が3歳未満
  2. 主に室内飼育
  3. ステロイドに反応する痒み
  4. 初発時は皮膚病変がない痒み
  5. 前肢の罹患(前足に病変あり)
  6. 耳介の罹患
  7. 耳介辺縁は罹患していない
  8. 腰部背側は罹患していない

8項目のうち5項目を満たすとアトピー性皮膚炎の可能性が高いとされています(感度85%、特異度79%)。

これは**「当てはまれば可能性が高い」**という基準であり、当てはまらないからといってアトピーを否定できるものではありません。

でも、お家の子の症状や初発年齢などが上の基準に「当てはまれば」アトピー性皮膚炎の可能性が高いと言えるでしょう。

当てはまらなければ違うとは言えませんが、一つの参考にしてください。

また犬のアトピー性皮膚炎では、

犬のアトピー性皮膚炎の特徴的な病変部位
犬のアトピー性皮膚炎の特徴

病変が出やすい部位:

  • 目の周り
  • 腹部
  • 脇の下
  • 陰部や肛門周囲
  • 足先
  • 内股

とにかく痒い皮膚病です。逆に痒くないならアトピー性皮膚炎ではないかもしれません。慢性で季節性があることが多く、時々重症化することもあります。

アトピー性皮膚炎の検査について

「検査でアトピーかどうか分かりますか?」とよく聞かれます。

結論から言うと、アトピー性皮膚炎は検査だけでは診断できません。

診断は症状の特徴・発症年齢・経過・他の病気の除外などを総合して行います。Favrot基準もその一つです。

ではアレルギー検査(血液検査)は何のためにするのかというと、原因となっているアレルゲンを特定するためです。ハウスダストマイトへの反応が強ければ減感作療法の候補になりますし、特定の食物への反応があれば食事管理の参考になります。

注意点もあります。検査で陰性だったからといってアトピーを否定することはできません。また検査で陽性だったものが必ずしも症状の原因とは限りません。検査結果は診察所見と合わせて判断することが大切です。

アトピー性皮膚炎の原因

人の方では最近新しく分かってきたことがあります。どうもアトピー性皮膚炎の人は遺伝的に皮膚の構造が弱いということです。

日本人の堀向先生の世界的に有名な論文では、「アトピーになりやすい家系の赤ちゃんを保湿剤を塗る群と塗らない群に分けると、保湿剤を塗った群の方がアトピー性皮膚炎を発症しにくい傾向にある」という結果が示されました。

元々皮膚の保湿ができない・バリア機能が弱いという遺伝的な性質があることが研究によって明らかになってきています。同じようなことが犬にも当てはまるのではないかと考えられています。

正常とアトピー性皮膚炎の皮膚バリアの違い
アトピー性皮膚炎の皮膚構造

皮膚の構造はよくレンガとモルタルに例えられます。モルタルがしっかりしていると外からの物質が入りにくく、中の水分も逃げません。アトピーではこのモルタルが弱く、皮膚が乾燥しやすく、アレルゲンや細菌が入りやすい状態になっています。

 アトピー性皮膚炎は多因子性の病気です!

 それから皮膚の上の細菌バランスが悪いみたいだ、そのせいでブドウ球菌ばっかり増えやすくなっちゃってる、とか、ストレスや湿度(皮膚が乾燥する冬に悪化する場合があります)なんかも悪化因子になるよねーということが分かってきました。

こんな風に色んな原因が絡み合って発症する病気を「多因子性の病気」と言います。

アトピー性皮膚炎は多因子性の病気です。

細菌バランスの乱れ・ストレス・乾燥なども悪化因子になります。皮膚のバリア機能が弱い→アレルゲンが入りやすい→炎症が起きる→掻き壊す→さらにバリアが弱くなる、という悪循環が続きます。

アトピー性皮膚炎の多因子論の模式図
アトピー性皮膚炎多因子論

まとめ

犬のアトピー性皮膚炎はアレルギーの一種で、遺伝的な皮膚バリア機能の弱さを背景に、環境・細菌・食物など様々な要因が絡み合って発症する多因子性の病気です。検査だけで診断はできませんが、アレルゲンの特定や治療の選択に検査が役立つことがあります。次回は治療編です。合わせてご覧ください。

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