アトピー性皮膚炎 ー 治療編 ー, 原因を多角的に捉えて解決する6つのポイント?

脇の下の痒み

アトピー性皮膚炎は多因子性の疾患です。痒みを忘れた快適な生活のために、原因を考えながら1つ1つ対応しましょう!

今までのところで、アトピー性皮膚炎は「多因子性の疾患」であると説明しました。

ですので、治療は原因ごとに組み合わせて対処していきます。

また除外とした感染症ですが、膿皮症とマラセチア皮膚炎はアトピー性皮膚炎にしばしば合併して病態を悪化させるので、常にそれらのコントロールにも気を使います。

大きく分けてそれぞれの原因に対して次のような対応を考えます。

原因1.原因物質を避ける

 検査によりアレルゲンが分かったらそれを避けるという方法。

ハウスダストやハウスダストマイト(イエダニ)なら掃除の見直し、出入りする場所の見直し、敷物の見直し、エアコンの手入れ、空気清浄機の導入など。

花粉
花粉

 花粉が原因なら、その季節の散歩は避ける。家の中に持ち込まないなど。

原因2.皮膚のバリア機能向上

 ずばり、スキンケアの見直しです。ヒトのアトピー性皮膚炎では、その発症に皮膚の乾燥が関係していることが分かりました。10年くらい前の論文でアトピー素因のある赤ちゃん(遺伝的に疑われる家系の赤ちゃん)に保湿剤を塗った方がアトピー性皮膚炎の発症が少なくなることが報告され、保湿の大切さがクローズアップされてきました。

動物でも同様です。

1)アレルゲンに対する反応→痒い→掻く→皮膚に傷→アレルゲン侵入&細菌も侵入→アレルギー反応&細菌感染の繰り返し

 2)乾燥→皮膚の角質に隙間→アレルゲン侵入→アレルギー反応&細菌感染

従来、上の1)が病態だと信じられていたものが

2)も大きいのでは? という考察ですね!!

乾燥をコントロールすることで、アレルギー反応自体も抑える結果になると考えられています。

また、

3)乾燥→余分な皮脂分泌→皮脂が大好きなマラセチアの増加→痒み

というサイクルにも対応することになります。

原因3.感染症対策

アトピー性皮膚炎に合併する感染症は、原因というよりおそらくは結果の一つですが、今の状態を見極める上では大切な要素になります。

アトピー性皮膚炎は、季節などによって良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。ここまで読んで理解してくださった方々は、コントロールできている状態であっても、微妙なバランスの上に成り立っている感じを捉えてくれているでしょう。

皮膚の状態が悪くなると膿皮症と呼ばれる細菌感染ややマラセチアの感染が生じて、痒みも悪化します。また、痒み止めの種類によっては長く続けると免疫力が低下し、ニキビダニ症が発症していることがあります。

長期管理しているアトピー性皮膚炎が急に悪化した時は、これらの関与を疑って皮膚検査などをきちんと行ったほうが良いです。

→感染症とスキンケア対策でお薬ほとんどいらなかった症例報告

原因4.痒みを止める

痒い→引っ掻く→皮膚に傷→アレルゲン侵入&細菌侵入→細菌感染→痒み増加

上のようなサイクルが生まれてしまうので、痒みをコントロールするというのはとても大事な治療の一つです。

痒みを止める方法はステロイドの内服以外にもたくさんありますので、現在はかなり安全にコントロールしやすくなっています。

選べる痒み止め→

原因5.アレルギー体質の改善 – 免疫学的アプローチ –

 わかりやすく上のような言葉を使って説明することが多いのですが、アレルギーを起こしやすい体質を変化させる根本的と言われる唯一の治療法が存在します。

それは減感作療法というものです。

IgEを作る免疫システムを変えていくと考えられていますが、何故?よりも臨床応用の方が先に発達した分野です。

ヒトではスギ花粉の舌下免疫療法が有名ですね!

 同じようなもので、犬ではハウスダストマイトによるアレルギーだけは、ちゃんと犬用に効果が認められた製剤が利用可能です。方法も1週間に1回、計6回注射するだけという簡単なもの。

免疫細胞
免疫細胞

効果率は70%前後ですが、ずっと悩まされてきた痒みが6回の注射で、薬が減らせたら良いですよね。実際に1日置き以上ステロイドを減らせなかった犬でステロイドが切れた子もいます!

ただし、6回の後、1ヶ月に1回10ヶ月から1-2年の間、追加接種した方が良いという専門医もいますので、6回目以降は相談で決めています。(明確にはされていません)

原因6. 環境の改善 ー 生活環境とストレスの見直し ー

痒みの増加にストレスが関与しているかどうか判定するのは難しいです。でも、誰か特定の人が来た時だけかゆみ動作が増えるとか、家の周りが工事などでうるさくなってからかゆみ動作が増えたということは時々あります。

また、淋しがりやさんだと一人ぼっちになった時に酷くなめたり噛んだりして患部を急激に悪化させてしまうこともあります。

遊ぶ時間を増やしてあげたり、夢中になれるおもちゃを与えたりといった工夫がうまくいくことがあります。

また噛み壊し防止のエリザベスカラーがストレスになる場合もあります。病変部の範囲によりますが、足や首まで覆えるような伸縮性が高くて1日中着ていられるようなお洋服をご紹介できます。

湿度計
湿度計

生活環境の湿度はいかがでしょうか?アトピー性皮膚炎は梅雨時から暑い季節に悪化する場合が多いですが、実は冬の乾燥でも痒みが悪化します。できれば湿度を適切に保ちましょう。また、踵などの部分的な乾燥には乾燥予防の外用をおすすめします。

まとめ

 治すというよりはコントロールすることがゴールです、とよく説明されますが・・。皮膚の酷い状態を綺麗にして、気持ちよく、副作用なく過ごすというのを常にゴールだと思って日々診療にあたっています。

生涯付き合っていく病気ですが、良い付き合い方を見つけてあげたいですね。😌

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