皮膚科で外耳炎??いえいえ、動物医療では外耳炎は皮膚科の一部と認識されているのです。食事アレルギーの8割犬が外耳炎だったという報告があります。またアトピー性皮膚炎の診断基準の一つにも外耳炎が挙げられているのです!外耳炎を繰り返す子は皮膚病として発症している可能性があるのです。
主な診療の流れ → 問診と身体検査までは皮膚病の診療案内と同様です
- 問診
- 身体検査
- Otoscopeを用いた外耳道の観察
- 耳垢の検査
- 外耳道の洗浄
- 治療の選択
Otoscopeを用いた外耳道の観察
ほとんどの動物病院では動物のお耳を観察する時に手持ちの耳鏡という器具を用います。性能によってはこれでも鼓膜まで確認できますが、飼い主様に見せることはできません。
それに光源は後述のOtoscopeと較べると幾分暗く、動物の大きさによっては鼓膜までよく見えないことがあります。
Otoscopeは鼓膜を含めた外耳道の観察に優れた器具です。そして、何と言っても飼い主様に状況をお見せして一緒に確認してもらうことができます。

慢性化した治りにくい外耳炎は、背景に皮膚病が存在して状況を複雑化している場合以外にも、植物のノギ(麦科の雑草の種)や自分自身の毛束などの異物、腫瘤などが原因になってしまっていることがあります。
耳道を塞ぐこれらを取り除くことで何ヶ月も何年も患っていた外耳炎を治せることが多くあります。 ノギによる外耳炎症例はこちら →
自分の毛が耳道の奥に落ち込んですごく気にしていたわんこの洗浄処置の様子はこちら ↓
耳垢の検査
耳垢を少し取って検査して悪化因子となる細菌や酵母菌などを観察します。耳ダニなどがいないか顕微鏡で観察します。
慢性化した化膿性の外耳炎では適切な抗生物質を選択するために培養検査を実施することがあります。
外耳道の洗浄
多くの外耳炎の症例では耳垢の分泌が亢進し、多量の耳垢が貯まっています。これは細菌や酵母菌の餌となって状況を悪化させるので、取り除く必要があります。
動物用の特殊な溶液で耳垢をふやかして、その後に専用の洗浄液で柔らかいカテーテルを使って外耳道を優しく洗浄します。炎症を起こしている外耳道は揉んだり擦ったりはしないほうが良いようです。余った洗浄液は吸い取って優しく水分を取ります。
その後に点耳薬を入れて初期治療は終了です。
この外耳道の洗浄方法は獣医耳研究会の前会長の獣医師から直接習ったものです。外耳炎の治療を得意とする獣医師は現在このようなやり方で洗浄をしているはずです。
動物の外耳道はとても繊細です。市販の固い綿棒は使用しないでください。

耳垢の貯留が多く洗浄が必要なのに動物が非常に嫌がる場合、鎮静や麻酔を提案することもあります。
治療の選択
多くの場合点耳薬を処方し、お家で点耳してもらいながら週に1回程度洗浄に通院していただきます。非常に軽度の症例では1回の通院で治ってしまうこともあります。が、非常に慢性化した子の場合、少なくとも数ヶ月の治療期間が必要になります。生涯にわたって維持治療を必要とする子も中にはいます。(月に1回の通院程度)