毛が全体的に薄くなってきた、ずんぐりと太って寝ていることが多い、なんとなく元気がない——「年のせいかな」と思いがちなこれらの症状、実は甲状腺機能低下症が原因かもしれません。見過ごされやすいこの病気について、症状・検査・治療法を解説します。
高齢のわんこが治りにくい皮膚病を抱えてやってきた時。。。私達皮膚科医は内分泌性の皮膚疾患を疑うことが多いです。よくあるのがこのような
「膿皮症と言われたんですけど、なかなか治りません」という症状

今日は甲状腺機能低下症についてお話します。
甲状腺機能低下症とはどんな病気?
甲状腺は喉のすぐ下にある内分泌器官で、甲状腺ホルモンは代謝を活発にし、筋肉にエネルギ-を供給し、心臓・内臓・皮膚など体のあらゆる部分の活動を調整するという非常に重要な役割を担っています。何らかの原因でこのホルモンが十分に分泌できなくなった状態が甲状腺機能低下症です。中型犬・大型犬に多い傾向がありますが小型犬でも発症します。5歳以降の中高齢犬に多く、猫ではほとんど起こりません。

高齢犬が治りにくい皮膚病を抱えてやってくる時、皮膚科医が必ず頭に置くのが内分泌疾患です。高齢犬に多い内分泌疾患は「甲状腺機能低下症」「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」「性ホルモン疾患」の3つ。全部一度に調べると高額になるので、皮膚の状態と皮膚以外の状態を合わせて観察し、可能性の高いものから順番に提案することが多いです。
症状
- 寒がる
- 全体的にぽってりとした太り方(お腹だけでなく腕・足・首まで寸胴体型になる)
- 毛が全体的に薄い・毛並みが悪い
- 部分的に毛がない・トリミング後に毛が生えない
- 動作がのんびり、寝ていることが多い
- 顔つきがぼんやりしている(「悲しそうな顔貌」と表現されます)


…と書いてみると、年を取ったら普通じゃない? という症状ばかりなんです。だから見過ごされることがとても多い。「膿皮症がなかなか治りません」という状態でようやく疑われて検査に進むことがほとんどです。
そのほかに徐脈、胆嚢の異常、一般血液検査の異常(高脂血症)などから検査を進めて発見されることもあります。
原因
主に免疫介在性のリンパ球性甲状腺炎と、特発性甲状腺萎縮によって起こります。遺伝的要因の関与も一部で考えられていますが、まだ明らかではありません。
また他の病気が甲状腺ホルモンのはたらきを阻害して同様の症状を引き起こすこともあります。ステロイドの長期投与で二次的に起こることもある点は注意が必要です。原因の95%は甲状腺そのもの、残り5%は他の疾患が原因です。
検査について
一般血液検査とは別に、甲状腺の機能を測定する専用の血液検査を行います。精度の高い検査のために外部の検査センターに血液を送付する外注検査を行うことが多いです。
治療について
甲状腺ホルモンの内服薬によるホルモン補充療法を行います。他の疾患が原因のものを除き、生涯にわたって治療を続ける必要があります。
治療を開始すると・・
- 活気が出てくる
- 毛が生える
- 毛並みが良くなる
- 膿皮症など感染症の治りが良くなる
などの効果が期待できます。
などの効果が期待できます。ただし神経過敏・動悸の増加など薬の効果が強く出すぎることもあるため、治療初期は定期的な診察と血液検査が必要です。きちんと治療すれば良好にコントロールできることが多いので、しっかり付き合ってあげてください🐾


きちんと治療すれば安全に良い感じでコントロールできることが多いので、しっかり付き合ってあげてくださいね。
その他の内分泌疾患 → クッシング症候群はこちら / 性ホルモン関連性皮膚疾患の症例はこちら
甲状腺機能低下症が疑われる場合はお気軽にご相談ください。
🐾 著者のコラムはこちら → note:獣医さんの徒然なるままに
