少し開いてきた耳道

アメリカンコッカースパニエル・3歳・避妊メス

「手術しかない、と言われてしまって…でも、どうしても踏み切れなくて」。そんな気持ちで来院された飼い主さんと、一緒に取り組んだ記録です。

来院までの経緯

1歳頃から外耳炎を繰り返し、かかりつけの動物病院に通い続けてきた子です。半年ほど前から通院頻度が増し、来院の1週間前にはベタベタとした大量の耳漏が見られる状態に。

そこから紹介を受けた二次診療施設に行ったところ、すぐに「CT撮影と全耳道切除術(TECA)が必要です」と告げられ、手術の日程まで組まれたそうです。「気持ちがついていけなくて」という言葉が印象的でした。

来院時の所見

両側性の慢性外耳炎。特に左耳は変形が著しく、耳道が病的に拡大した状態になっていました。両耳から大量の細菌が検出されたため、培養・感受性検査を実施。

ただし、細いカテーテルをなんとか挿入できる状態は保たれており、全身状態も良好で、疼痛もやや軽減傾向にありました。

コッカー耳の狭窄初診時

「カテーテルが通る」「全身状態が悪くない」ことから「治療への反応を見る余地がある」と考え、まずは内科療法の反応を見ることにしました。

治療の経過

軽く温めた生理食塩水を用いて、カテーテルで優しく耳道を洗浄することから始めました。刺激を最小限にすることを優先しながら、炎症・疼痛を抑える投薬と腫れを引かせる点耳薬を処方し、週1回の通院を開始。

2週間後、嬉しいことに耳漏が減少し、わずかに耳道が開いてきているのを確認できました。

少し開いてきた耳道

1歳以前からの発症という病歴から食物アレルギーを疑い、血液検査を実施しました(食物アレルギーの血液検査は補助的なものですが、すでに複数のフードを試して混乱されているご家族には、「まず疑わしいものを外す」きっかけとして実施することがあります)。

結果は豚肉が陽性、卵・ダックが要注意。これらを含まないフードへの切り替えをお勧めしました。

週1回のカテーテル洗浄を3ヶ月継続したところ、耳道が十分に開大したため、麻酔下でオトスコープによる精密な洗浄処置を実施。

その1ヶ月後には通院間隔を2週間おきに延長できるようになりました。

「最近、とってもアクティブになったんです!」という嬉しい声が聞かれたのもちょうどその頃です。診察室をいきいきと歩き回るこの子を見て、こちらまで嬉しくなりました。

明るい笑顔

現在は両耳ともよく開いた耳道と、清潔な鼓膜が確認できる状態で、月1回の耳洗浄で良好に維持されています。

コッカーの耳道狭窄改善

後日、飼い主さんからとても温かいお手紙もいただきました。

嬉しいお手紙

こちらこそ、出会えて良かったです。飼い主様もワンちゃんもスタッフもみんなで頑張った結果ですね。ありがとうございます。

この症例から伝えたいこと

慢性外耳炎が進行して耳道が変形・狭窄した場合、「全耳道切除術しかない」と判断されることは珍しくなく、実際に手術が最善の選択肢であるケースもあります。ただ、カテーテルが通る、感染コントロールの余地がある、根本原因(アレルギー)にアプローチできる、といった条件が揃っている場合には、丁寧な内科療法を根気強く続けることで、驚くほど改善する症例が意外とあるものです。

「手術しかない」と言われてもどうしても踏み切れない、という方は、一度ご相談ください。


この子はこの動物病院の症例でした 👉 アンベットクリニック

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