1.疥癬って何?
「ヒゼンダニ」というダニ(目に見えないくらい小さい。ものすごく眼の良い人はギリギリ見えるかも!!)が、皮膚に寄生して起きる皮膚病です。
2.どんな症状なの?
とにかく痒みが強いです😖
そして丘疹(ブツブツした発疹病変)や、フケの亢進(増えること)を認めます。疥癬のフケは分厚く降り積もるような症状になることが多いです。診察台でも掻き続けるほど痒みが強いので毛が切れて薄くなってきます。

このダニは上皮に穴をあけて潜り込んでいき、動物の角質を餌にして生きていると考えられています。生き物ですから中で排泄物も出します。その排泄物にアレルギー症状を起こすことがひどい痒みの原因となるようです。


疥癬の病変分布はある程度特徴的で、耳介の先端、肘、踵、そして腹部が好発部位です。
3.どうすれば分かる?
丁寧な皮膚検査を行います。フケに多くの疥癬や、疥癬の卵が含まれることが多いです。そのため、既に何度もシャンプーしてフケを完全に落としてしまっている場合、検出率は低くなります。有名な皮膚の専門医でも疥癬が皮膚検査で出てくる率は50%程度と言っています。そのため、病理検査が必要になったり除外診断あるいは診断的治療といって、ダニが証明されてはいないけれども疥癬の治療をしてみるということもあります。

診断的治療はアトピー性皮膚炎の治療としてステロイドなどの免疫抑制作用を有する薬を使う前に行うべき標準的な治療法です。
4.人にうつる?
うつります。
ただし、疥癬は動物の皮膚から離れてそんなに長くは生きられない(だいたい3日くらいしか生きられないと言われています)ので、ちょっと抱いたくらいですぐ感染するものではありません。
しかしながら友人の獣医師や飼い主様でも感染した方がいますので、疥癬の動物は治療が完了するまでは他の動物とは隔離し、使用したタオルは50度以上のお湯に10分以上漬けてから洗濯してください。また一緒に寝るなどは控え、抱っこした日はシャワー、入浴を必ずするようにしてください。衣類のタオルと同様に対応した方が良いでしょう。

5.どうやって治療するの?
以前はイベルメクチンという薬を内服したり、注射したりする治療法が一般的でした。現在ではいくつかのノミ・マダニ予防製品が疥癬に対して治療効果があることが分かっています。なので、治療効果のある製品を日常使いしている子は感染する可能性がかなり低いです。そのため、疥癬をみる機会は減ってきています。
ノミ・マダニ予防製品をみなさん使用している使用していると思いますが、疥癬に対して効果があるものとないものがあるので確認が必要です。
十分治療したにも関わらず痒みだけ残る場合は、身体に残っているダニの排泄物などに対するアレルギー症状が継続している可能性を考え、治療薬を継続しつつ抗アレルギー薬を使用します。

6. 冬なら安心?
いえいえ、疥癬は案外涼しい季節にも感染する危険性があります。最近私はJCABINという獣医さん向けのウェブセミナーで皮膚病コーナーを請け負っています。その仕事を通じてタヌキを長年研究している方とつながりました。
「東京タヌキ探検隊」*というサイトを運営されている方です。おかげで色んな新しい事を知ることができました。
それによるとタヌキは都心部にもいて、犬や猫から疥癬を移され、可哀想に治す機会が得られないまま身体中疥癬だらけで弱ってしまうことがあるとのことです。
私の地元横浜(そんなに田舎ではないんです。横浜駅徒歩圏内ですよ!)でも全身脱毛のタヌキが目撃されていますし、東京を流れる多摩川の河原でも同様のタヌキが目撃されています。
疥癬の原因になるヒゼンダニは2,3日で死ぬ場合が多いとされていますが、最適な温度と湿度の条件下では、10日以上も感染力を持続するという実験データがあります。また犬の皮膚に乗ったダニは2時間以内に皮膚に潜り込み、その時点では痒くもなんともなくて、しばらくしてから痒みなどの症状が出てくるということです。
一度疥癬にかかった子は、散歩コースに疥癬に感染するリスク(疥癬のタヌキや野良猫がいるなど)があるのかもしれません。その場合は涼しい季節も予防を継続した方が良さそうです。
*「東京タヌキ探検隊」さんでは20年以上も主に都内のタヌキの目撃情報を継続して集めています。学術的にも興味深い活動です。是非皆様もタヌキを目撃したらこちらに報告してみましょう!
疥癬に紛らわしい皮膚病として、アトピー性皮膚炎、ニキビダニ症、食餌アレルギー、膿皮症などがあります。合わせてごらんください。