床ずれは治ります。床ずれを起こさないようにしよう!床ずれはどうしてなる?治すコツ、予防、なってしまったらどうしたら?
犬も上手に飼う方が増え、高齢化の波がやってきております。そんな中寝たきりになってしまうことも。そんな時に時として問題になるのが「床ずれ」です。
床ずれは医学的には「褥瘡」と呼びます。なんと人の方では褥瘡学会というものもあります。私も入っております。それだけ寝たきりの方の床ずれは大きな問題なのですね。
犬でも床ずれは痛々しいもの。どうしてなってしまうのでしょうか?
1. 床ずれはどうしてなる?
床ずれは体の一部分が圧迫で血行不良になることで発生します。体の特に出っ張ったところにできる傾向にあります。動物では肩、腰、大腿部の付け根(股関節)、頬、肘、肋骨の出っ張りなどが主な発症部位です。これらはどれも痩せた時に骨が出っ張っている部分です。

骨と床の間に挟まった筋肉、皮下組織、皮膚は生きている組織であり、細い血管から栄養をもらっています。圧迫により血管が押し潰されて栄養が行かなくなり、壊死して溶けてしまうというのが床ずれの正体です。
例えば骨盤の出っ張りを横から見てみましょう。正常な子では骨盤の周囲には臀部のムチムチした筋肉があり、さらに皮下脂肪もしっかりあるために、寝っ転がったとしても骨盤の出っ張りはそこまで圧迫を受けることはありません。
↓ 空色が骨、ピンクは筋肉、周りの薄黄色が皮下組織、下の茶色が皮膚だと思ってみてください。

ところが、高齢で痩せてくると筋肉も皮下組織も薄くなってしまいます。痩せた子は骨の出っ張りが目立ちますよね。

この状態で寝たきりになってしまうと、硬い床、薄いマットと骨盤の出っ張りの間の組織の血管が潰れてしまいますね。血液が組織に供給されない時間が長く続くと、組織は壊死し、終いには皮膚もなくなってしまいます。

分かりやすく模式図で描いたのでちょっと変なところもあるかもですが・・。血管が潰れてしまうイメージは分かるでしょうか。
周りの組織は正常なので一生懸命直そうとしますので、むしろ血管は豊富で出血しやすく、盛り上がったりすることもあります。
2. 治しかたの基本
治す基本は圧迫を取ることです。ただし床ずれ部分だけに着目してドーナツ型に穴を開けたマットなどを使うのはうまく行かないこともあります。(素材や厚み、動物の状態などによってはうまくいくこともありますが)
面で支える。これが基本です。

柔らかく十分な厚みがあり、体重を全体に分散できるマットがお勧めです。体が沈んだ時に床の硬さが感じられてしまうようでは不適切です。かといって、柔らかすぎて体が曲がってしまうと寝心地が悪いかもしれませんね。その時は柔らかいマットに寝かせて、その下に高反発マットを敷いてあげると良い結果に結びつくことが多いです。
3. 潰瘍部分のケア
では肝心の皮膚に穴が空いてしまった部分はどのようにしてあげると良いでしょうか?
ポイントは傷にくっつかず、よく吸収する状態を保つことです。湿潤療法は傷の管理の基本ではありますが、湿らせすぎると肉芽が盛り上がって上皮の細胞の移動が妨げられ孔は塞がりません。また、真菌(カビ)や細菌も繁殖しやすくなってしまいます。
高いドレッシング剤も色々と市販されていますが、上記の条件を満たす安価なものを清潔に毎日何回か変えてあげるのも有用です。傷の周りを優しく洗浄して清潔に保ち1日2回当て物を変えてあげて、余分な水分をしっかり吸収、除去してあげることができれば、感染は怖くありません。

4. 何を塗ると良いか?
皮膚に孔があいてしまった部分に何を塗るか?はそれほど重要ではないかもしれません。ただ、傷の状態によってはひどい感染を起こしていたり、滲出液が少なく渇き気味であったりして治癒に向かいにくい状態になってしまっている事があります。この場合は傷を適度に湿らせた状態を保ち、乾燥を防ぐために塗り薬を調合する場合があります。
褥瘡の状況はその子により様々です。どこに出来ていてどんな状態なのか?何が問題になっているのか?感染を制御しにくい状態があるのか?など。
また、同じ子でも傷の状態は変わることがあります。最初と、あまりうまくいかない時はその後も、時折通院で確認していただくと良いと思います。
初期対応が良く、栄養状態も良ければ少し環境を整えてあげるだけで急速に治ってくれることもあります。
下左の写真は上に出てきた子の床ずれの治療1週間後です。特殊な塗り薬を使用したわけではありません。そのさらに1週間後には右のようにすっかり小さくなりました。


紹介した症例はこちらの病院です→アンベット・クリニック
ただし多くの場合は栄養状態が悪かったり、暴れて擦ってしまっていたり、ひどく乾燥していたり、逆に湿らせすぎていたり、何ヶ月も経過してしまっていたりと、傷の状態が良くないためにスムーズな治癒に向かわないケースもあります。慢性化した創傷は少し特殊な扱いが必要になり、状況に応じてやり方を変えながら数ヶ月にわたって治療が必要になります。
また、栄養状態が非常に悪い場合や、どうしても暴れて擦ってしまう場合は治癒が難しい事があります。この場合はできるだけ良い方法、これ以上悪化させない方法を考えていきましょう。
