床ずれは治ります。床ずれを起こさないようにしよう!床ずれはどうしてなる?治すコツ、予防、なってしまったらどうしたら?

 犬の高齢化が進む中、寝たきりになってしまう子が増えています。そんな時に問題になるのが「床ずれ」、医学的には**褥瘡(じょくそう)**と呼ばれる状態です。

私は創傷治癒・褥瘡治療で有名な動物病院で4年半にわたって研鑽を積み、多くの床ずれ症例を間近で見てきました。床ずれは適切な対応をすれば改善できます。一方で、対応が遅れるほど治癒が難しくなるのも事実です。「どうしたらいいかわからない」と一人で抱え込まず、早めにご相談ください。

1. 床ずれはどうしてなる?

床ずれは、体の一部分が長時間圧迫されることで血行不良が起き、組織が壊死することで発生します。特に骨が出っ張っている部分にできやすく、犬では肩・腰・股関節・頬・肘・肋骨などが主な発症部位です。

骨と床の間に挟まれた筋肉・皮下組織・皮膚は、細い血管から栄養をもらっています。圧迫によってその血管が潰れ、栄養が届かなくなることで組織が壊死し、最終的には皮膚に孔が開いてしまうのが床ずれの正体です。

例えば骨盤の出っ張りを横から見てみましょう。正常な子では骨盤の周囲には臀部のムチムチした筋肉があり、さらに皮下脂肪もしっかりあるために、寝っ転がったとしても骨盤の出っ張りはそこまで圧迫を受けることはありません。

↓ 空色が骨、ピンクは筋肉、周りの薄黄色が皮下組織、下の茶色が皮膚だと思ってみてください。

高齢になると筋肉も皮下脂肪も薄くなり、骨の出っ張りが目立つようになります。

この状態で寝たきりになってしまうと、硬い床、薄いマットと骨盤の出っ張りの間の組織の血管が潰れてしまいますね。血液が組織に供給されない時間が長く続くと、組織は壊死し、終いには皮膚もなくなってしまいます。

分かりやすく模式図で描いたのでちょっと変なところもあるかもですが・・。血管が潰れてしまうイメージは分かるでしょうか。

なお、周囲の正常な組織は懸命に修復しようとするため、病変部の血管は逆に豊富になり、出血しやすく盛り上がったりすることもあります。

2. 治し方の基本

圧迫を取ることが最優先です。

ただし、床ずれ部分だけに着目してドーナツ型に穴を開けたマットを使うのは、うまくいかないことがあります。大切なのは体全体を面で支えることです。

柔らかく十分な厚みがあり、体重を全体に分散できるマットが適しています。寝かせた時に床の硬さが伝わってくるようでは不十分です。柔らかいマットの下に高反発マットを重ねると良い結果につながることが多いです。

3. 潰瘍部分のケア

皮膚に孔が開いてしまった部分のケアでは、傷にくっつかず、よく吸収する状態を保つことが重要です。

湿潤療法は傷の管理の基本ですが、湿らせすぎると肉芽が過剰に盛り上がり、上皮細胞の移動が妨げられて孔が塞がりにくくなります。また真菌や細菌も繁殖しやすくなります。

高価なドレッシング剤でなくても、清潔な当て物を1日2回交換し、傷の周りを優しく洗浄して余分な水分をしっかり除去できれば、感染は十分にコントロールできます。

4. 何を塗ると良いか?

塗り薬の選択はそれほど重要ではない場合もありますが、傷の状態によっては適切な外用薬が必要になります。

ひどい感染がある場合、滲出液が少なく乾燥しがちな場合などは、傷を適度に湿った状態に保つ塗り薬を調合することがあります。

褥瘡の状態はその子によって様々です。どこにできているか、感染の程度、滲出液の量、慢性化の度合いなど、状況に応じて対応を変える必要があります。同じ子でも傷の状態は変化しますので、初期対応後も定期的に通院で確認していただくことをお勧めします。

早期に対応できた症例では、環境を整えるだけで急速に改善することがあります。

下の写真は治療1週間後、さらにその1週間後の様子です。特殊な塗り薬を使用したわけではありません。

紹介した症例はこちらの病院です→アンベット・クリニック

一方で、栄養状態が悪い・暴れて擦ってしまう・慢性化してしまっているなど、治癒が難しいケースもあります。そういった場合でも、できるだけ良い方法を一緒に考えていきます。諦めないでください。

床ずれは早期対応が何より大切です。「もしかして床ずれかも?」と思ったら、悪化する前にご相談ください。

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よくある質問

Q. 床ずれはどの段階から病院に連れて行くべきですか? 

A. 皮膚が赤くなっている段階、つまり孔が開く前が最も対応しやすいです。「なんとなく赤い」「毛が抜けてきた」という段階でもご相談ください。悪化してからよりも、早い段階の方が治療の選択肢が広がります。

Q. 床ずれを予防するにはどうすればいいですか?

 A. 十分な厚みと柔らかさのあるマットで体全体を支えることが基本です。また定期的に体位を変えること、栄養状態を維持すること、皮膚を清潔に保つことも重要です。

Q. 市販のドレッシング剤や軟膏で自己処置しても大丈夫ですか? 

A. 軽度であれば清潔を保ちながら自宅でのケアも可能ですが、傷の状態は見た目以上に複雑なことがあります。特に孔が深い・臭いがある・膿が出るといった場合は早めに受診してください。

Q. 床ずれは必ず治りますか? 

A. 早期対応で栄養状態が良ければ、環境を整えるだけで急速に改善することもあります。ただし慢性化したケースや栄養状態が非常に悪い場合は、治癒に時間がかかることや、完全な回復が難しいこともあります。どんな状態でも一緒に最善の方法を考えますので、まずはご相談ください。

Q. 床ずれの治療は痛いですか?犬が嫌がります。

 A. 傷の処置は多少の不快感を伴うことがありますが、できるだけ負担の少ない方法で行います。嫌がりがひどい場合は鎮静を使うこともご相談できます。

Q. 褥瘡(じょくそう)と床ずれは同じですか?

 A. 同じです。褥瘡は医学的な正式名称で、床ずれは一般的な呼び方です。


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