犬は外耳炎がとても多い動物です。耳が臭い、黒い耳垢がたくさん出る、しきりに耳を掻く——そんなサインが見られたら、まず外耳炎を疑ってください。この記事では、外耳炎の原因・自宅でのケアの注意点・病院での治療法について、獣医皮膚科認定医がわかりやすく解説します。
外耳炎とは
外耳炎とは、耳の中に炎症(赤い・痒い・腫れているなど)が起きている状態のことです。
耳だけに炎症が起きる場合と、全身の皮膚病の一部として耳にも炎症が出る場合の両方があります。体の皮膚に発疹がなくても、実はアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの一環として「今は耳だけに症状が出ている」というケースもあるため注意が必要です。
動物病院への来院理由の中で、耳の異常は1、2を争うほど多い主訴です。それほど犬の外耳炎は身近な病気なのです。

外耳炎の原因
① 自宅でのケアのやりすぎ・間違い
シャンプーが少し耳に入っても、しっかり流せば問題ありません。ただし液が残ってしまうと、通常は酸性に保たれている耳道の環境がアルカリ性に傾き、細菌が繁殖しやすくなります。
自宅ケアでよく見られる問題が綿棒の使用です。犬の耳道はデリケートで、市販の綿棒は大きすぎ・硬すぎます。2〜3回こするだけで耳道が腫れてしまうことがあります。また、オリーブオイルでのケアを勧める情報を見かけることがありますが、これもお勧めできません。犬の耳にはマラセチアという酵母菌が常在していることがあり、脂分が増えると過剰増殖して炎症を悪化させる可能性があります。

自宅でのお手入れは、専用の洗浄液で耳をゆすぎ、入口付近の汚れを小さな綿花で優しく拭き取る程度にとどめてください。
② 異物
特に片側だけが外耳炎の場合、草のノギや奥に落ち込んだ毛などの異物が原因になっていることがあります。他のページで詳しく説明しますね。
③ 全身の皮膚病の一部として
アトピー性皮膚炎の多くが外耳炎を併発しています。また食物アレルギーの犬の約80%に外耳炎が見られるという報告もあります。今は耳だけでも、年々他の部位にも症状が広がるケースがあります。
④ 耳道内の腫瘤(できもの)
耳鏡で耳の奥・鼓膜まで観察すると、ポリープのような腫瘤が耳道を塞いでいて、慢性外耳炎の原因や悪化因子になっていることがあります。この場合は組織を採取して病理検査を行い、何の腫瘤かを調べます。多くの病院で使われる手持ち耳鏡よりも、オトスコープを使うことでより詳細に観察できます。

外耳炎の治療
正常な耳道の皮膚は、鼓膜から出口に向かって自然に移動し、フケや汚れを排出します。ところが外耳炎が起きると過剰な耳垢が分泌され、耳道内の毛に絡まって細菌や酵母菌の温床になります。炎症によって耳道が腫れてさらに狭くなり、悪化のサイクルが生まれてしまいます。治療はこの悪化サイクルを断ち切ることが目的です。

① 洗浄
耳道内の毛をある程度除去し、溶解液で耳垢をふやかしたあと、柔らかいカテーテルなどで優しく洗浄します。
② 微生物を減らす
耳垢を検査し、必要に応じて細菌や酵母菌の増殖を抑える・殺す薬を使用します。炎症を治めるだけで菌が減るケースもあります。耳の状態に応じて、内服薬・洗浄液・点耳薬などを組み合わせます。

③ 炎症を抑える
抗炎症作用のある内服薬や点耳薬を処方します。
④ 背景にある皮膚病にアプローチ
繰り返す外耳炎の場合、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど全身の皮膚病が背景にある可能性があります。食事療法やアレルギー検査をお勧めすることもあります。
通常は1〜2週間に1回程度、数回通院していただきながら、耳の洗浄と点耳薬の処置を行います。自宅での毎日の点耳をお願いすることもあります。
まとめ
外耳炎は犬にとても多い病気ですが、適切な治療と根気で改善できます。大切なのはしっかり治して慢性化させないこと。繰り返す場合はアレルギーなど背景にある病気の検索も重要です。耳の異常が続くときはお早めにご相談ください。
よくある質問
Q. 犬の耳掃除に綿棒を使ってもいいですか?
お勧めしません。市販の綿棒は犬の耳道には大きすぎ・硬すぎます。2〜3回こするだけで耳道が腫れてしまうことがあります。自宅でのお手入れは専用の洗浄液で耳をゆすいで、入口付近の汚れを小さな綿花で優しく拭き取る程度にとどめてください。
Q. 外耳炎はどうして繰り返すのですか?
繰り返す外耳炎の背景には、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど全身の皮膚病が関係していることが多いです。耳の治療だけでなく、背景にある病気を探して根本から治療することが再発予防につながります。
Q. 外耳炎を放置するとどうなりますか?
痒みがどんどん強くなるだけでなく、中耳炎に進行したり、耳道の壁が厚くなって変形し、治りにくい慢性外耳炎になってしまうことがあります。耳の異常が続く場合は早めに動物病院を受診してください。
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