皮膚科が得意って言ってるだけなんじゃ誰も耳を傾けてくれない。スタンダードを常に意識して・・
1.きっかけは大学時代から・・
私は学生時代の研究論文が犬の外耳炎でした。ブドウ球菌による皮膚の感染症である膿皮症やマラセチア皮膚炎、アトピー性皮膚炎の論文や書籍もたくさん読んで、皮膚病に興味を持ちました。研究室の先生がおっしゃるには皮膚科は獣医さんにあんまり興味が持たれない分野だと。。。じゃあ、勉強しようって思ったんです。
すると何と!!新人獣医師として動物病院勤務3日目から最初の病院院長に
“あなたは皮膚病をやりなさい”
と指名され、日本獣医皮膚科学会元会長の永田雅彦先生のセミナーに出席させていただける幸運に恵まれました。右も左も分からない状態で、わずか6人の少人数セミナーに参加。ベテラン叔父さん(失礼🤣)獣医さん達と一緒に皮膚科の勉強をしました。ASCセミナーの2年目のことです。今は立派なASCもあの当時は古いアパートの2階でした。永田先生が今の私よりもお若かった頃のことです!
永田先生は当時アメリカで皮膚科を勉強して戻ってきたばかり!日本にアメリカの獣医皮膚科を広めようとした初期の活動に参加させていただけるという幸運だったのです。
それから4年余り毎月永田先生のセミナーに出席し、皮膚科の基礎をばっちり叩き込まれました。
それを一つの運命として、皮膚科をライフワークを位置づけました。
2.新米は修行の日々
とはいえ、新米獣医師。まずは一般診療・・予防医学、便検査(消化管内の寄生虫)、緊急疾患、心臓病、不妊手術、整形外科、神経学、内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症および亢進症、副腎皮質機能亢進症)、内臓疾患(肝臓病、腎臓病、膵臓病など。)腫瘍、眼科。。。毎日100件の来院数のある病院で毎日夜遅くまで働きました。セミナーなど勉強会もふんだんにあり、家に帰るのが夜中の12時を過ぎるのもざらでした。
そして、4年目を迎える頃将来について考えを深める必要が出てきました。
当時いた病院は少し難しい外科は全部院長がやるものと決まっていました。「代診にやらせるなんていい加減な病院でしかない!」というのが当時の院長の考えでした。
「これではここに一生いても整形外科はおろかこれ以上伸びることはできないのではないか?」「もしいつか一人で小さな病院を開業しなければならなくなった時このままでその力を付けられるだろうか。。?」「病院によって得意不得意があり、来る病気さえ違ってくる。このままここにいても私はどこの病院でも通用する獣医師にはなれないのではないか?」
そんな焦りから退職し、若さに任せて自分探しの期間となりました。。
3.自分探しの日々
外科と人脈
この2つが当時の私に徹底的に足りないものでした。求人サイトに登録し、何人かの院長先生と連絡を付け、いくつもの動物病院も見学し、企業の社長や企業で働いている獣医の先生にも会っていろんな話を聞きました。
実は多くの獣医師がこのような経験をします。そして大学で大学院生や大学の研修医として経験と人脈作りに励むか、思い切って外国に留学するというのがよくあるパターンです。
でも、私はお金がありませんでした。すでに奨学金の借金が数百万円あったので、これ以上借金するのは嫌でした。それに一人暮らしの上、これ以上親を頼りにできる状態ではありませんでした。自分の衣食住は自分で賄わなければなりません!
企業のホームページを作るバイトをしたり、ちょっとした企画や立案をしたりしながら、いくつかの動物病院でパート勤務をしながら外科の腕も磨きました。内科も随分自分で勉強し直しました。
4.妥協できない皮膚科へのこだわり・・
その中で段々分かってきたのが、
「私はどうやら皮膚科が得意だ。世間の大方の先生よりも正しく皮膚病を治してあげられるみたいだ!」という思いと、「皮膚科のやり方は永田先生のやり方をベースにするのが一番。皮膚科だけは妥協できない。。」という思いでした。
どうも内科も外科もとっても勉強していて凄い獣医さんでも皮膚科ってあんまり興味がないとか分からないっていうケースがあるってことに気がついたんです。
「やっぱり皮膚科がちゃんとやりたい。でも他の事もいっぱい勉強してもっともっと何でもできる獣医さんになりたい。自分の腕を思う存分発揮したい。。」と募る思い。。
そのうちに出会ったのがある企業病院の院長職で、院長を務めることになりました。
「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったものです。自然と皮膚病が多く集まるようになり、経験も増やすことができました。もちろん院長でしたから夜中の駆けつけお産介助から帝王切開手術。骨折の手術まで数多くこなしました!
小さい頃からの夢だった動物病院の開業に近い状態。皮膚科が得意な動物病院。でも骨折から腫瘍から何でもできます!という明るくて一生懸命な良い動物病院だったと思いますよ。一時は獣医師4人、看護師2人の動物病院の院長でした。
5.なぜか結婚できた・・
でも、大きな会社でしたから会社全体を考える必要がありました。少しでも役に立って会社をより良いものにするお手伝いをしたい💪と異動に応じることになりました。。。
ところが、会社の吸収合併などがあり、本社の方向性がちょっと納得のいくものではなくなっていました。。
何とか対応しようともがきながら翻弄されるうちに良い縁談が。。。
というわけで結婚退職をしました。😆いえね、とても気の合う男性だったんですよー。(今の主人です!)
院長職を投げ出したみたいになったことについては私としても信頼してくださった飼い主さん達に申し訳ない気持ちがあります。(これは転職の度に心苦しいところ・・)何とか元に戻る方法や結婚先に近いところで同じ会社の動物病院で働けないかなど検討したのですが、どうにもならなかったんです。すみません。。
6.段々皮膚科を中心にした仕事に・・そして皮膚科認定医を取得
ちょうど結婚した2007年ごろから獣医皮膚科学会が認定医制度を開始しました。以前から皮膚科が好きで得意だと自認していましたが、それは「自分は皮膚科が得意だと思っている獣医さん」でしかないわけです。皮膚科の博士号を取ったわけでもなく、大学で皮膚科の研究はしたけれど論文をたくさん発表できたわけではない。
その状態でちゃんとした勉強してやってます。と分かってもらうには認定医取得は良い方法と思えました。
皮膚科認定医を取得するには→こちらに詳しく書いています。
2022年現在皮膚科認定医は全国で100人程度(全国に小動物獣医師は数万人います)です。
結婚してからは東京農工大学附属動物病院で皮膚科研修医を数年経験し、2012年に獣医皮膚科認定医を取得 (→獣医皮膚科認定医とは) しました。産後復帰してから10年以上、主に横浜のベイサイドアニマルクリニックで皮膚科を担当してきました。
皮膚科の得意な動物病院を探すには、皮膚科認定医や皮膚科専門医の在籍する病院を探すのは一つの客観的基準になるかと思います。(もちろんまだ認定医れていない先生でも皮膚科の得意な先生はいらっしゃると思いますが)
独自路線の特殊すぎる治療はあまり提供していません。
ASCセミナー、大学病院の診療知識や論文をベースにし、引き続き皮膚科のセミナーや学会にも参加し、スタンダートな皮膚科診療を元にして、かつそれぞれの子の状態、性格、お家の事情なども加味して経験上のアレンジを加えた治療を提案します。
”皮膚病で悩める動物たちと飼い主さんのオアシスのような存在になりたい”
といつも思っています。

きっと今よりずっと良くしてあげる!と思って取り組んでます💪
出会ってよかったと言ってもらえるのが私の喜びです!!
7.皮膚病の診療実績;
膿皮症、アトピー性皮膚炎、食餌アレルギー、疥癬症、ニキビダニ症、皮膚糸状菌症、マラセチア皮膚炎、ツメダニ症、マダニ寄生、ノミ寄生、ノミアレルギー、ステロイド皮膚症、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、肝臓皮膚症候群、家族性皮膚筋炎、紅斑性天疱瘡、脂漏性皮膚炎、皺壁性皮膚炎、急性湿性皮膚炎、若年性膿皮症、無菌性結節性皮下脂肪織炎、AlopeciaX、淡色被毛脱毛症、性ホルモン関連性皮膚疾患、好酸球性皮膚炎、表皮嚢腫、肥満細胞腫、組織球腫、上皮向性リンパ腫、亜鉛反応性皮膚疾患、肉芽腫性脂腺炎、落葉状天疱瘡、反応性組織球症、皮膚リンパ球症など
8.現在の診療施設
現在月曜日・火曜日午前中は横浜市神奈川区のアンベットクリニック
水曜日は1日横浜市都筑区のセンター南動物病院
木曜日・日曜日の午前中は東京都大田区の動物病院エルファーロで
隔週日曜日午後東京都港区 The Vet 南麻布動物病院で
主に皮膚科を担当しています。