全体的に毛が薄い。お腹がポッテリと太っている。お水を飲む量が多い。おしっこが多い。皮膚病を繰り返す。高齢犬のこんな症状。。。ひょっとしてホルモンの問題かも!!

1.特徴

高齢になってから皮膚病が治らない。それに以下のような症状が一致したらひょっとしてホルモンの病気の一種、「クッシング症候群=副腎皮質機能亢進症」の可能性があります。

  • お腹がポッテリと太鼓っ腹になってきた。
  • 食欲はすごい。
  • お水を飲む量が多い。
  • ハァハァ言うことが多くなった(パンティング)
  • おしっこが多い
  • 皮膚が薄い
  • 傷が治りにくい

高齢になってから起きるホルモン関連の皮膚病の2大原因に、「甲状腺機能低下症」と、「クッシング症候群=副腎皮質機能亢進症」があります。どっちも太りやすくなるのが特徴的ですが、太り方とは皮膚の感じが違うんですよね。どっちも毛の抜け方は割と似てるんですけど。。。

  • 甲状腺機能低下症は、皮膚は厚い。太り方は全体的に寸胴な感じのんびりしている
  • クッシング症候群の方は皮膚は薄い。太り方はお腹だけポテッと太鼓っ腹になる。活動的食欲もすごい。

という感じです。

2.飲水量が増えます

飲水量は犬の平均が1日60ml/kg 程度。クッシングでは100ml/kgくらいになったりします。つまりは5kgくらいのわんこが1日に500mlのペットボトルを空にするくらい水を飲むなら明らかに異常です。

不安な時は24時間でどれくらい水を飲んでいるか、計量カップとかを使って量ってみてくださいね。

飲水量の増加は他にも糖尿病や腎臓病、利尿剤やステロイドを飲んでいる時にも見られます。

3.症状

クッシングの時の典型的なお腹の様子はこちら↓ お腹だけポテッと膨らんでます。

クッシングの犬の腹部

拡大したのがこちら↓ 皮膚がすごーく薄くて切れそうなくらい。皺がよってます。皮膚の下の血管がよく見えますね。

クッシング症候群の犬の皮膚、拡大像

皮下組織が薄くなり脆弱になった皮膚は傷つきやすく、

「引っ掻いたら赤くなって治らない」、「毛が生えない」、また甲状腺機能低下症の場合と同様に「膿皮症が治らない」という症状で来院されますね。

4.検査はどんなことをするの?

血液検査とお腹のエコー検査を行います。

血液検査は少し特殊なホルモンの検査をします。最初に採血して、副腎を刺激する注射をし、1時間後にまた採血するという検査、あるいは最初に採血して副腎を抑制する注射をし、8時間後にまた採血する検査の2種類があります。

どちらを選択するかは、病院の状況や動物の性格にもよります。(この検査はストレスの影響を受けるので。ストレスに弱い子ほど不正確な値になりやすいのです。)

お腹のエコー検査では副腎の厚さを見ます。横向きあるいは仰向けでゴロンと寝てもらって、超音波でお腹の中をのぞくものです。痛くも怖いものでもありませんので、安心して受けてくださいね!

超音波検査、アンベットクリニックにて

5.治療は?

検査結果にもよりますが、ほとんどが「下垂体依存性副腎皮質機能亢進症=過形成」というタイプになります。

実はこのタイプ(およそ9割)は、実は脳の下垂体に腫瘍ができることで副腎の異常につながっているのです。。つまり大元は脳にあるので、本当は脳の手術や放射線治療をしなければ根本治療にはなりません。脳の状態を調べるにはCT検査やMRI検査を受ける必要があります。

CT/MRIなどの画像検査、脳の手術は一部の大学病院や大きな病院をご紹介することも可能です。

画像検査や脳の手術や放射線治療までは望まない場合、問題が起きている副腎のホルモンを抑える内服薬を処方して生涯治療を続けることになります。この場合は数ヶ月に1度診断の時と同じようなモニターのための血液検査を行います。

残りの1割は副腎の腫瘍によるものです。血液検査と腹部のエコー検査で判断します。腫瘍は手術をおすすめすることが多いです。大きくなると周りの大事な血管に侵入して血行障害を引き起こしかねないからです。

他に持病があるなどの問題があり手術を望まない場合は、やはり内服薬による治療を行います。治療に反応してくれることもありますが、過形成の場合よりは反応が劣るようです。

その他の内分泌疾患→ 甲状腺機能亢進性はこちらから→, 性ホルモン関連性皮膚疾患の症例はこちらから →

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