皮膚糸状菌症真菌「カビ」による皮膚病 ー真菌が原因の皮膚病だと言われたら?

皮膚糸状菌症

どこからうつったのかしら?人や他のペットにうつる?一緒に寝ないほうが良い?隔離しなくちゃだめ?お部屋の掃除や消毒ってしたほうがしたほうが良いの?治療はどうすればよいの?

皮膚糸状菌による皮膚病の特徴

皮膚糸状菌の皮膚病はフケが特徴です。脱毛があり、その周囲に分厚く折り重なるようにフケが目立つ時は皮膚糸状菌による感染症を疑います。猫、特に子猫に多くその場合は耳の先や鼻周囲、手先に病変が現れることが多いです。

皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症に感染した猫の足先

犬ではやはり足先に多い印象ですが、どこにできても不思議はありません。円形の脱毛と周囲のフケが特徴ですが猫と比べると周囲の盛り上がりが少し目立つことが多いです。

膿皮症が皮膚糸状菌と誤診される場合があります。丁寧な皮膚検査と、時には培養検査が役立ちます。犬で皮膚糸状菌の感染症を見ることはまれです。

皮膚糸状菌は膿皮症に比べると痒みが少ない事が多いです。

感染源はどこ?

皮膚糸状菌は毛や皮膚のケラチンが大好き。ケラチンを餌にする真菌と覚えてください。

猫は皮膚糸状菌の中のMicrosporum Canisを持っていることが多いと言われています。でも多くの場合皮膚病を発症しません。大人になると免疫を獲得することがほとんどと言われています。犬は猫からうつることがあるかもしれません。

Microsporum gypseumは土壌にいる皮膚糸状菌です。外猫ではM. gypseumの感染を時折みます。M. gypseumが見つかった時は土からの感染を疑います。

庭と猫
お庭によくでる猫さんはたまに。。

人のいわゆる水虫菌(白癬菌)=Trichopyton mentagropytesは犬や猫ではみることが少ないのですが、動物にも病原性を持ちます。げっ歯類がよく持っているようです。ハムスターはよく皮膚糸状菌症になります。

人や他のペットにうつる?

白癬菌=Trichopyton mentagropytesTrichopyton rubrumは動物でめったに見ることがありません。が、人から動物にうつります。

研修医時代に犬の背中の脱毛症から白癬菌が出てきて、どうやらお父さんが水虫の足で犬をナデナデしていたということがありました。

皮膚糸状菌はいずれも人畜共通の感染症です。人から動物へ、動物から人へうつることがあります。お家の子が真菌の皮膚病ですと言われたら触った後は特に念入りに手洗いをしてください。一緒に寝たりすると腕や首などの弱いところに病変が出てしまうことがあります。

人の皮膚糸状菌症
人の皮膚糸状菌症、写真は
新しい皮膚科学(中山書店)より

何に気をつければ良い?

環境中の整備と消毒が必要です。なるべく短期間に留めますが隔離を勧めることもあります。

感染した子がいつもいる動物用のベット、敷物は次亜塩素酸10-100倍希釈で消毒、洗濯は他のものと別にして2度洗いしましょう。皮膚病が治るまで繰り返すことが大切です。

ペットのベット
ベットは特に注意

早く治すために特に長毛の子では患部の毛を短くするのはシャンプー療法の効果を高める上で良いことなのですが、その際にバリカンを使用しないでください。周りに飛び散ります。ハサミで丁寧に毛を短くし、切った毛は消毒液で湿らせてすぐ拭き取り、ビニールに入れるなどの処理をしましょう。使用したハサミも消毒してください。

バリカンはダメ
バリカンはダメ

人畜共通の感染症ではありますが、同じ空間にいる、短時間触るなどで簡単にうつるものではありません。でも一緒に寝る、いつも抱っこしているなどではうつることがあります。

特に免疫抑制剤使用中の方や乳幼児、ご高齢の方では感染リスクが高いので注意が必要です。

治療はどうするの?どれくらいかかるの?

患部は毛刈りして抗真菌薬を塗布、あるいは抗真菌薬を含むシャンプーで洗浄の上、抗真菌薬の全身投与(飲み薬)を行います。

治療は数ヶ月かかるのが普通です。完全に治るまでしっかり治療しましょう。

環境中の整備が十分でないと、環境中から再感染し、治療が終わりません。飼い主さんの協力が必要です!

見た目だけで判断は危険です。よく似た皮膚病もあります。

こちらも一緒に確認してくださいね。→膿皮症ニキビダニ症

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