耳が臭〜い!黒い耳垢がいっぱい出てくる。汚れが多いと言われた。耳が赤い。痒がる。
・・これらはきっとみんな”外耳炎”です!
外耳炎とは・・・
外耳炎は犬の耳に炎症(赤い、痒い、腫れているなど)が起きてしまっている状態を言います。
耳にだけ炎症が起きる場合と、全身の皮膚病+耳の炎症となっている場合の両方があります。体の他の皮膚をみて何も発疹などがない場合でも実はアトピー性皮膚炎や食事アレルギー、食事反応性皮膚疾患などの一環として、今現在 ”耳にだけ炎症が発症している!” という可能性もあり、今後注意が必要です。
実は動物病院に来院するあらゆる病気の中で耳の異常を訴えてくるケースはとても多いです。統計で1,2を争う多さです。そう、
犬は外耳炎が多い
のです。

原因は様々・・
その1. シャンプーが入った。家でのお手入れの失敗
シャンプーが少々入っても十分流せば大丈夫ですが、液が残ってしまうと、常には酸性で細菌繁殖を防いでいる耳道の環境がアルカリ性に傾いて、細菌が繁殖しやすくなるとされています。
家でのお手入れでたまにあるのが、綿棒!!
綿棒!!
お薦めしません。

犬の耳道はデリケートで、市販の綿棒は大きすぎ、硬すぎです。2,3回擦ったらもうみるみる腫れてくるはずです。。。あと、ペットの本などでオリーブ油での手入れを薦めているものをみたことがあります。これも良くないです。
犬の耳には常在菌としてマラセチアという酵母菌がしばしば存在します。これは脂分が好きで、脂分が増えると過剰増殖して炎症を引き起こす、あるいは悪化させます。
お家でのお手入れは専用の洗浄液でたまにゆすいで、入口付近の汚れを柔らかく丸めた小さな綿花で優しく拭き取る程度に留めてください。
その2.異物
特に片側だけが外耳炎の場合、異物が原因になっていることがあります。異物は草のノギや、奥に落ち込んだ毛などです。他のページで詳しく説明しますね。
その3.全身の皮膚病の1つとして
アトピー性皮膚炎の多くが外耳炎を併発しています。また、食事アレルギーの犬の80%に外耳炎がみられたといいます。これらの病気が背景にある可能性もあります。今は耳だけだけど、年々他の部位に症状が出てくるというケースがあります。
その4.出来物ということも。。。
耳の奥、鼓膜まで耳鏡を使ってよく観察します。時にポリープのような出来物(しこり・・・腫瘤)が耳道を塞いでいて、慢性外耳炎の原因あるいは悪化因子になっていることがあります。この場合、一部を採材(全部取れる場合は取りますが!)して何の出来物なのかを調べます(病理検査:取ったものを処理し、検査施設に送付して細胞をみる専門家の意見を仰ぎます)。

治療
正常な耳道の皮膚は鼓膜から出口に向かって移動し、フケと汚れとを自然に排泄します。ところが、外耳炎が発症し、過剰な耳垢が分泌されると、それらは耳道内の毛に絡まったりして細菌や酵母菌の繁殖の原因となり、外耳炎を悪化させます。炎症のために、耳道は腫れ上がり狭くなって、ますます上皮の正常な移動を妨げます。
こうして外耳炎の悪化サイクルが出来上がってしまいます。

外耳炎の治療はこの悪化サイクルを断ち切る目的で行われます。
その1.洗浄
耳道内の毛をある程度除去し、耳道を洗浄します。耳垢は溶解液でふやかした後に柔らかいカテーテルなどを使って優しく洗浄します。いずれ詳しく説明しますね。

その2.微生物を減らす
耳垢を検査し、悪化させている細菌や酵母の増殖を防ぐあるいは殺すお薬を使用します。耳の状態に応じて、内服薬や洗浄液、点耳薬などを使います。

その3.炎症を抑える。
抗炎症作用のある内服薬や点耳薬を処方します。
その4.背景にある皮膚病にアプローチ
再発を繰り返す場合、全身の皮膚病が背景にあるかもしれません。食事療法やアレルギー検査をお薦めする場合もあります。
一般的にだいたい週に1回から2回程度何回か病院に通っていただき、お耳をきれいに洗浄して点耳薬を点耳します。お家で毎日点耳していただくことも多くあります。
外耳炎の治療には根気が必要です。しっかり治して慢性化しないようにしましょう。
慢性難治性の外耳炎の治療についてはまた別に書きますね。